外房ではほぼ唯一の、そして全国でも指折りのコーヒービーンズロースターである店主は私たちのコーヒーの師匠でもあります。そんな師匠からの焙煎室増築の依頼ですから名誉でもあり張り切って取り掛かりました。

自家焙煎をしている店にとって焙煎室というのは、いわば心臓部にあたるように思います。ですから新たに導入するという焙煎機を中心に、いかに機能的に構成するかということを第一に考えました。現場でも作業場でも焙煎機や建物の実物大の模型をつくって検討を重ねていきます。煙突の位置、空気の流れ、外からの見え方、もちろん操作のしやすさ、などなど検討すべき課題は複雑だからです。

意匠的には施主の希望を聞きつつ、外回りはモルタルの塗りっぱなし、内部は漆喰と単純きわまりない構成ですが、細かな部分のデザインを煮詰めていったことと左官屋さんの端正な仕上げとがかみ合って、静謐な空間ができあがりました。この聖なる焙煎室から次の時代のコーヒーが生まれることを祈るばかりです。

屋根の高さと勾配を実地で検討。その後、垂木で実寸模型を簡易的に制作します。

お清め。オーナーの息子さんにも参加していただきました。

内壁はモルタルに漆喰仕上げ。取り付け棚の壁には下地を仕込んでいます。

モルタル生乾きのタイミングでオーナーさんに思いを刻んでいただく。