OD 邸
June 2019: 古民家改修
設計・施工| 海岸屋ふー
昭和30年代に近くの町から移築したという入母屋の平屋の建物です。
非常に上質な仕事がしてあり、その当時の施主と施工者の見識の高さがうかがわれます。
工事は基礎・土台・屋根修理から電気と水回りを全部やりなおすという大規模な改修になりました。
解体工事をした後、増築部分を切り離ししたら、母屋全体を持ち上げます(揚屋)。
小さい建物でしたら海岸屋ふーでも上げますがこのくらいになると曳家さんに頼みます。
不陸(不動沈下で、家の水平面が平らでなくなること)の調整と、土台の腐朽修理とをするためです。
外房地域の古民家の基礎は「岩地業」といって、切り出した岩を埋めてその上に石を据えつけてあります。
初期の圧密沈下を終えたその岩地業を壊さずにそれをくるむように新たな独立基礎を作ります。
荷重の大きなところは大きな独立基礎、そうでないところは小さい基礎、と大きさを変えて型枠をセットし、鉄筋を組みます。
土台の修理で小さな腐朽は切り取って埋め木をします。埋め木に使う樹種は栗の木です。湿気に強く、重さにも耐えるからです。
大きく腐朽した土台は交換します。この材料はヒノキ。
土台の修理を終えて建物を下して据え付けたところ。このあと高さの微調整をして全面に防湿コンクリートを打ちます。
柱の下端が傷んでいる場合は根継ぎということをやります。腐朽している部分だけを切り取ってつなぐという伝統的な手法です。
掛かっている荷重や根継ぎの位置などの条件を考えて継手の種類を選択します。
土間に大谷石を敷きこんでいます。
左官下地として「きずり」を取り付けています。普通は石膏ボードを使いますが、この建物が次の世代まで続くことを願えば、そこが弱点になってはならないと考えて、きずりにしました。
玄関ホール。大谷石を敷いて広くとりました。正面の框は旧玄関に使ってあった上がり框を少し削って再利用したものです。
リビングは二つの和室と縁側をひとつの空間にして、天井を外して梁を見せました。床は杉の3cm厚の無垢板です。
キッチンはいつもの星精郎製のもの。
シンクの位置もレンジの位置も、ベニヤ板で実物大の模型を作って検討してもらってから制作に入りました。
大型の洗面ボウルの隣にあるのは、スロップシンクという深くて大きな掃除用の流しです。
子供たちの靴や雑巾なども気がねなく洗えると思います。